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かにこうせん
蟹工船
小林 多喜二
「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页
彼等は荷物を蟹臭い節立った手で、鷲づかみにすると、あわてたように「糞壺」にかけ下りた。そして棚に大きな安坐をかいて、その安坐の中で荷物を解いた。色々のものが出る。――側から母親がものを云って書かせた、自分の子供のたどたどしい手紙や、手拭、歯磨、楊子、チリ紙、着物、それ等の合せ目から、思いがけなく妻の手紙が、重さでキチンと平べったくなって、出てきた。彼等はその何処からでも、陸にある「自家」の匂いをかぎ取ろうとした。乳臭い子供の匂いや、妻のムッとくる膚の臭いを探がした。
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おそそにかつれて困っている、
三銭切手でとどくなら、
おそそ罐詰で送りたい――かッ!
やけに大声で「ストトン節」をどなった。
何んにも送って来なかった船員や漁夫は、ズボンのポケットに棒のように腕をつッこんで、歩き廻っていた。
「お前の居ない間に、男でも引ッ張り込んでるだんべよ」
皆にからかわれた。
薄暗い隅に顔を向けて、皆ガヤガヤ騒いでいるのをよそに、何度も指を折り直して、考え込んでいるのがいた。――中積船で来た手紙で、子供の死んだ報知を読んだのだった。二カ月も前に死んでいた子供の、それを知らずに「今まで」