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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

しかしそれなら、一昨日の夜も昨日の朝も昼間も、別に煙が出なかったのはどうしたわけだろう」

とにかく無人であるべき家の煙突から、モクモクと煙が上るというのはどう考えても合点がゆかないことだ。どうしても、中に誰か居て、ストーブに火を点けたのでなければ話が合わない。もし人が居るとしたら、誰が居るのだろう。鴨下ドクトルが出ていった後に、一体誰が残っているというのだろう?

奇人館の怪事を、何と解こうか。

帆村が門前に腕組をして考えこんでいるときだった。丁度そこへ、街の異変を聞きこんだ所轄警察署の警官たちが自動車にのって駈けつけてきた。

「さあ、早いとこ、お前はベルを押せ。なにベルがない。探せ探せ。どこかにある筈や」

と指揮の巡査部長が大童の号令ぶりをみせた。

「――それから別に、お前とお前とで、この鉄の門を越えて、玄関の戸を叩いてみい」

声の下に、二名の警官が勇しく鉄の門に蝗のように飛びついた。

「さあ、お前ら三名、裏口へ廻れ、一人は連絡やぜ」

部下を四方へ散らばせると、巡査部長は帽子の頤紐をゆるめて、頤に掛けた。そして鼻をクンクン鳴らして、

「うわーッ、こらどうもならん臭さや。