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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

しかし蠅男は、一体どうして糸子を、ソッとこの部屋に送りこんだものだろうと帆村は考えた。

「モシモシお客さん。何か間違いでも起りましたやろか」

帳場では、訝しげに聞きかえした。

「うむ。――」帆村は唸ったが、このとき或ることに気がついて受話器をもちかえ、「そうだ。さっき帳場で貰った西洋封筒に入った手紙のことだが、あれは誰が持ってきたのかネ」

「あああの手紙だっか。あれは――」と帳場氏は言葉を切ってちょっと逡った。

「さあ、それを云ってくれたまえ。誰があの手紙を持ってきたのだ」

「――そのことだすがな、お客さん。ちょっと妙なところがおまんね。実はナ、あの手紙は私が拾いに出ましてん」

「手紙を拾いに出たとは?」

帆村の眉がピクリと動いた。

「いえーな、それがつまり妙やなアとは思ってましたんですわ。詳しくお話せにゃ分ってもらえまへんが、あれは午後四時ごろやったと思いますが、この帳場へ電話が懸って来ましてん。懸ってみますと男の声でナ、いま玄関を出ると庭に西洋封筒を抛りこんであるさかい、それを拾って帆村さんに渡しといて呉れ――と、こないに云うてだんネ。そして電話はすぐ切れました。