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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

帆村探偵は車を下りて、頤紐をかけた警官に、住吉署の正木署長が来ていないかと尋ねた。

「ああ正木さんなら、公園南口の公衆電話のそばに、うちの署長と一緒に居やはるはずだっせ。そこに警戒本部が出張してきとりますのや」

うちの署長というのは、戎署のことをいうのであろう。天王寺公園や新世界は、この戎署の管轄だった。

帆村探偵は警戒線のなかに入れて貰って、市電のレール添いに公園南口の方へ歩いていった。行くほどになるほど公衆電話の函が見えてきた。さっきホテルから蠅男と話をしたとき、怪人物蠅男はあの電話函のなかに入っていたんだ。美人お竜も、あの函の前であたりに気を配っていたのかも知れない。近づくに従って、一隊の警察官が停留場の前に佇立しているのを認めた。丁度誰何した警官があったのを幸い、彼を案内に頼んで、その一行に近づいた。

なるほど正木署長もいた。帆村と親しい村松検事もいた。戎署長の真赤な童顔も交っていた。

正木署長は手をあげて帆村をよんだ。

「やあ皆さん。蠅男が電話をかけているのを知らせてくれた殊勲者、帆村探偵が来られましたぜ。その方だす」

旧知も新知も帆村の方をむいてその殊勲をねぎらった。