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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

「え、もう一度いって下さい」

「つまり、蠅男は機関銃を鳴らしとるのに違いないのに、その肝腎の銃身がどこにも見えしまへんねん」

「それはおかしな話ですね。蠅男はどんな風に構えていたんですか」

「ただこういう風に」と署長は左腕を水平に真直に前につきだしてみせ、「左腕を前につきだして立っとるだけやったいう話だす。手にはなんにも持っとらしまへんねん。透明機関銃やないかという者も居りまっせ」

「透明機関銃? まさか、そんなのがあろう筈がない。何か見ちがえではないのですか」

「いや、蠅男に向うた誰もが、云いあわしたようにそういいよったんで……」

「フーム」

帆村はその奇怪な話を聞いて、狐に鼻をつままれたような気がした。

「そうそう、そういえば先刻の蠅男の電話では、蠅男は今夜のうちにまた誰かを殺すといっていましたよ」

「なに今夜のうちに、また殺すって」

検事が愕いて聞きかえした。

「ほんまかいな――」

正木署長は恐怖のあまりしばらくは口も利けなかったほどだった。

「誰か蠅男から脅迫状をうけとった者はないのですか」

検事と署長とは、思わず不安げな顔を見合わせた。

奇行ドクトルの出現