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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

が今夜もキッパリ人を殺したということ!

法曹クラブの殺人

村松検事は、果して恐るべき殺人魔「蠅男」なのであろうか?

検事を信ずることの篤い帆村探偵は、誰が何といおうと、それが間違いであることを信じていた。しかし何ごとも証拠次第で決まる世の中だった。元の鬼検事正、塩田先生の殺害現場を調べた検察官はまことに遺憾にたえないことだったけれど、村松検事を殺人容疑者として逮捕するしかないのっぴきならぬ証拠を握っていたのであった。

そのときの報告書に記された殺人顛末は、次のような次第であった。

場所は、大阪の丸の内街と称せられる堂島に、最近建てられた六階建のビルディングで、名づけて法曹クラブ・ビルというところだった。

当夜午後九時をすこし廻ったとき、人造大理石の柱も美々しいビルの玄関に、一台の自動車が停った。そして中から降りて来たのは一人の鬚の深い老人と、もう一人は黒い服を着た顔色の青白い中年の紳士だった。この老人は、云わずとしれた鴨下ドクトルだったし、黒服の中年紳士は村松検事であった。

二人はボーイに来意をつげた。

ボーイは早速電話でもって、塩田先生に貸してある小室へ電話をかけた。