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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
果して彼は奇人館に於て、何を発見する?
大戦慄
帆村探偵が、住吉区岸姫町の鴨下ドクトル邸を訪れてみると、そこの階下の応接室には、先客が三人も待っていた。それは大阪へ来たついでに楽しい近県旅行をしていたドクトルの一人娘カオルと情人上原山治と、外に正木署長との三人だった。カオル達は、約束どおりに、帰阪するとすぐさま署へ出頭し、そこで此の前は不在だった父親ドクトルに連れ立って会いにきたものであることが分った。
帆村の名刺も、雇い人の手で二階の研究室にいるドクトルに通じられたが、その返事は、逢うには逢うが、いま実験の途中で手が放せないから暫く待っていてくれとのことだった。
「カオルさんは今度お父さまにまだひと目も会っていないのですか」
と、帆村は座が定まると、ドクトルの令嬢に尋ねた。
「さっきチラリと廊下を歩いている父の後姿を見たばかりですわ」
「そうですか。幼いときお別れになったきりだそうですが、お父さまの姿には何か見覚えがありましたか」
と問えば、カオルは首飾りをいじっていた手をとめ、ちょっと首をかしげて、
「どうもハッキリ覚えていませんのですけれど、幼いときあたくしの見た父は、右足がわるくて、かなりひどく足をひいていたようですが、今日廊下で見た父は、それほど足が悪くも見えなかったので、ちょっと不思議な気がいたし