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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

この際、出来るだけ早くそれを探しあてることだ。

帆村は、心の中に頷いて、小暗い部屋の中を見廻した。暗さの中に瞳が慣れると、この部屋は書庫であるのに気がついた。その書庫には、プーンと黴の生えた匂いのする古い図書が何万冊となく雑然と積みかさねられてあったのである。

いま帆村の感覚は針のように尖っていた。彼はその堆高い古書の山を前に向いあっていたとき、不図一つの霊感を得た。

(――この古書の中に、なにか参考になる記録が交っておりはしまいか?)

そう思いつくと、帆村は猛然と活動を開始した。彼はその堆高い古書を、片っぱしから調べ始めたのである。

カオルと山治も、帆村のために進んで協力を申出でた。そこで三人は、鼠のようになって、古書の山を切り崩していった。

小半時間も懸ったであろうか。

「うむ、あったぞッ!」

と、突然帆村が叫んだ。カオルと山治が愕いてその方を見ると、帆村探偵は、空っぽになった本棚の隅から一冊の皮表紙の当用日記を、頭上高くさしあげていた。

「これだこれだ。ドクトルの日記だ。塩田検事正の名が出ている!」

「ええッ」

「まだある。玉屋総一郎の名もあるんだ」