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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
帆村探偵は興奮のあまり、ドクトルの日記帳をもつ手のブルブル慄えるのをどうすることもできなかった。
鴨下ドクトルの日記帳の中には、そも如何なる大秘密が認められてあったろうか?
縮小人間の秘密
実に貴重なる鴨下ドクトルの日記帳だった。
プーンと黴の匂いが鼻をうつその黄色くなったドクトルの日記帳のページの中から、永らく帆村の知りたいと思っていた「蠅男」の正体が遂に顔を出したのであった。
帆村は、青白い額の上にジットリと脂汗を滲ませながら、日記帳の中に認められていた愕くべき十年前の秘密について、ドクトルの遺児カオルとその愛人との前に説明をした。その大略は次のようなものであった。
*
その日記帳を展げてみると、まずドクトルが一つの素晴らしい医学的研究を思いついて、たいへん得意らしい文章が目についた。そこには、その研究がどんな素晴らしい内容をもっているのか、それには触れていなかった。
其の次には、ドクトルはその研究材料となってくれる人間を何とかして獲たいものだと、くどくどと熱望の言葉がつらねてあった。
それからしばらくページを繰ってゆくと、こんどはいよいよ念願が叶って、近く試験台になる人間を手に入れることができるかもしれないと書いてあった。