轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

気を励ました内蔵助エ、――」

と、うたうは南部坂雪の別れの一節だった。この節は、頗る古い節まわしだった。このうたい手は、砂の中から首だけだして、向うの壁に向いたまま、真赤になって唸っているのだった。

帆村は、これも奥へよったところを選び、両手で砂を掘って穴をこしらえていった。砂を掘ると、あとから湯がドンドン湧いてきた。彼はほどよい穴をつくると、そのなかにボチャンと身体をつけた。なかなかいい気持であった。

相客はまだ浪花節をうなりつづけていた。

帆村は身体をゴソゴソ動かして、その相客と同じように胸のあたりにしきりに砂を掻きよせた。

そのとき一人の女が、室内に入ってきたのを感じた。絣の着物を、短く尻はしょりをして、白い湯文字を短くはいていた。

その女はいきなり帆村の方へやってきて、

「おいでやす。もっとうまいこと砂をかけてあげまひょうか」

といって、彼のうしろにまわり、肩のところへ砂をバサバサかけてくれた。

「ありがとう。もういいよ」

と帆村がいった。女は黙って、なおも砂を帆村の頸の方にまで積んでいった。女はさっきの愛想笑いに似ず、急に無口のようになって、帆村の頸のあたりに、妙な具合に両手をからませるのであった。