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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

貴方がもっと早く来て下されば、なにもこんな瀕死のサーカスをごらんに入れないですんだのですよ」

看護婦の君岡に抱えられ再びベッドの上に移されながら、傷つける帆村は息切れの入った減らず口を叩いていた。

焼屍体の素性

「機関銃に撃たれた警官はどうしました」

帆村はベッドの中に、病人らしく神妙に横たわって、側の椅子に腰をかけている村松検事に尋ねた。

「うん、――」検事は愛用のマドロスパイプに火を点けるのに急がしかった。「気の毒な最期だったよ。――」

「そうですか。そうでしょうネ、まともに受けちゃたまらない」

生命びろいをした帆村は溜息をついた。

「それで犯人はどうしました」

検事はパイプを咥えたまま、浮かぬ顔をして、

「――勿論逃げちゃったよ。なにしろこっちの連中は今まで機関銃にお近付きがなかったものだからネ。あれを喰らって、志田(死んだ警官)は即死し、勇敢をもって鳴る帆村荘六はだらしなく目を廻すしサ。それが向うの思う壺で、いい脅しになった。だから追い駈けた連中も残念ながらタジタジだ。――そんな風に犯人をいい気持にしてやって、一同お見送りしたという次第だ」

検事は、いつもの帆村の毒唇を真似て、こう説明したものだから、帆村は苦笑いをするばかりだった。