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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
「ほほう、――」
「一つは右足の拇指がすこし短いのだ。よく見ると、それは破傷風かなんかを患って、それで指を半分ほど切断した痕だと思う」
「なるほど、それはどの位の古さの傷ですか」
「そうだネ、裁判医の鑑定によると、まず二十年は経っているということだ」
「はあ、約二十年前の古傷ですか。なるほど」と帆村は病人であることを忘れたように、ひきしまった語調で呟いた。
「――で、もう一つの傷は?」
「もう一つの傷が、また妙なんだ。そいつは同じ右足の甲の上にある。非常に深い傷で、足の骨に切りこんでいる。もし足の甲の上にたいへんよく切れる鉞を落としたとしたら、あんな傷が出来やしないかと思う。傷跡は癒着しているが、たいへん手当がよかったと見えて、実に見事に癒っている。一旦切れた骨が接合しているところを解剖で発見しなかったら、こうも大変な傷だとは思わなかったろう」
「その第二の傷は、いつ頃できたんでしょう」
「それはずっと近頃できたものらしいんだがハッキリしない。ハッキリしないわけは、手術があまりにうまく行っているからだ。そんなに見事な手術の腕を持っているのは、一体何処の誰だろうというので、問題になっておる」