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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

団欒の写真であって、サンタ爺さんひとりは酒のコップを持ってニコニコ笑っているのであった。

その実体鏡でみると、この狭い家の中の遠近がハッキり見え、そして多勢の身体も実体的に凹凸がついていて、本当の人間がチャンとそこに見えるのであった。いつまでも見ていると、本当にアルプスへ登って、この小屋の中を覗きこんでいるような気がしてきて、淡い望郷病が起ってきたり、それから小屋の家族たちの眼がこっちをジロリと睨んでいるのが、急になんともいえなく恐ろしくなったりして、堪らなくなって眼鏡から眼を離して周囲を見廻す。すると一瞬間のうちに、アルプスを離れて、身はわが日本の宝塚新温泉のなかにいることを発見する――という淡い戦慄をたいへん愛した帆村荘六だった。彼は十何年ぶりで、そのアルプス小屋の一家が相変らず楽しそうに暮しているのを発見して嬉しかった。サンタ爺さんの手にあるコップには相変らず酒が尽きないようであったし、彼の長男らしい眼のギョロリとした男は、一挺の猟銃をまだ磨きあげていなかった。

帆村は子供の頃の心に帰って、それからそれへとカラクリを見て廻った。

そのうちに彼は甚だ奇抜な一銭活動を発見した。