轻松读懂日语经典作品
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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
その怪しき女と池谷とが、宝塚の温泉のなかから一銭活動の「人造犬」というフィルムを買って持ちだしているんだが、それは何の目的あってのことだろう?
こんな風に考えてくると、帆村はこれから糸子を中心にして、向うに見える池谷控家のなかに起ろうとする事件が、これまでの数々の疑問にきっとハッキリした答を与えてくれるにちがいないことを思うと、旅館のどてらの下に全身が武者ぶるいを催してくるのだった。――
さて糸子は帆村に注意されたとおり、一度とて後をふりむいたりなどせず、ひたすら彼女単身で訪ねたふりを装った。
彼女は池谷控家の玄関に立った。
玄関の扉が半開きになっていた。そこで呼び鈴の釦を軽くおした上、なかに入っていった。それは勝手知ったる主治医の家であったから。
糸子の姿が扉のうちに消えてしまうと、帆村はさらに全身に緊張が加わるのを覚えた。彼は眼ばたきもせずに、木立の間から控家の様子を熱心に窺った。一分、二分……。何の変りもない。
「まだ大丈夫らしい。挨拶かなんかやっているところだろう」
暫くすると、二階の窓にかかっている水色のカーテンがすこし揺らいだのを、敏捷な帆村は咄嗟に見のがさなかった。