轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

(階段はどこだ!)

廊下づたいに内に入ると、目についた一つの階段。彼は糸子の名を連呼しながら、トトトッとそれを駈けのぼった。

だが糸子の声がしない。すこし心配である。

「糸子さアん!」

二階には間が三つ四つあった。帆村はまず表から見えていた十畳敷ほどの広間にとびこんだ。

「居ない!」

糸子の姿は見えない。水色のカーテンが静かに垂れ下っているばかりだ。

押入の中か? 彼はその前へとんでいって襖をポンポンと開いてみた。中には夜具や道具が入っているばかりで糸子の着物の端ひとつ見えない。

さて困った。糸子はどこへ行ったのだろう。次の部屋だ。――

そのとき帆村の脳裏に、キラリと閃いた或る光景があった。それは糸子が宙に吊りあげられているという、見るも無慚な姿だった。彼女の白い頸には、一本の綱が深く喰いこんでいるのである。……

(ああ厭だッ)

帆村は両手で目の前にある幻をはらいのけるようにした。それは彼にとって不思議な経験だった。これまで彼は数多の残虐な場面の中に突進した。しかし一度だって、恐ろしさのために躊躇をしたり厭な気持になったことはない。それは職業だと思うからして起る冷静さが、そういう感情の発露をぎゅッとおさえたのである。