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はえ
蠅
海野 十三
「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页
すこしも怪しくない」
「それだけのことでは、怪しくないという証明にはならない。それは蠅があの黒い函の中から逃げだせるという可能性について論及したに過ぎない。あの蠅を捕獲して、六本の脚と一個の口吻とに異物が附着しているかいないかを、顕微鏡の下に調べる。もし何物か附著していることを発見したらば、それを化学分析する。その結果があの黒函の中の内容である豚料理の一部分であればいいけれど、それが違っているか、或いは全然附着物が無いときには、どういうことになるか。あの蠅は弁当屋の出前の函にいたものではないという証明ができる。さアそうなれば、あの蠅は一体どこからやって来たのだろうか。もしやそれは一種の新兵器ではないかと……」
「あッはッはッはッ」と参謀フョードルは腹を抱えて笑い出した。「君の説はよく解った。そういう種類の説は昔から非常に簡単な名称が与えられているのだ。曰く、懐疑主義とネ」
「イヤ参謀、それは粗笨な考え方だと思う。一体この室に蠅などが止まっているというのが極めて不思議なことではないか。ここは軍団長の居らるる室だ。ことに季節は秋だ。蠅がいるなんて、わが国では珍らしい現象だ」