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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

恒温室で孵化して、それで先刻からピシピシと激しい音響をたてていたんだ。ああ、タンガニカの蠅!」

博士は身に迫る危険も忘れ、呆然と窓の下に立ちつくした。ああ、恐るべき怪物!

このキング・フライは、後に十五万ヴォルトの送電線に触れて死ぬまで、さんざんに暴れまわった。

第二話 極左の蠅

その頃、不思議な病気が流行った。

一日に五六十人の市民が、パタリパタリと死んだ。第十八世に一度姿を現わしたという「赤き死の仮面」が再び姿をかえて入りこんだのではないかと、都大路は上を下への大騒動だった。

「きょうはこれで……六十三人目かナ」

死屍室から出て来た伝染病科長は、廊下に据付けの桃色の昇汞水の入った手洗の中に両手を漬けながら独り言を云った。そこへ細菌科長が通りかかった。

「おい、どうだ。ワクチンは出来たか」

「おお」と細菌科長は苦笑いをしながら足を停めた。「駄目、駄目、ワクチンどころか、まだ培養できやせん」

「困ったな。今日は息を引取ったのが、これで六十……」

と云おうとしたところへ、肥っちょの看護婦がアタフタ駈けてきた。

「先生、すぐ第二十九号室へお願いします。脈が急に不整えになりまして……」