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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页

青空文庫

それで彼は足を掬われて仆れ、左門の太刀を遁がれることが出来たのである。左門は、転がって逃げる頼母を追った。しかし縁まで走り出た時には、既に頼母は起き上がり、庭を走っていた。

「逃げるか、卑怯者、待て!」

左門は追い縋った。

喊声が起こった。

十数人の人影が、抜き身を芒の穂のように揃え、一団となり、庭を、こっちへ殺到して来ようとしていた。

五郎蔵の乾児達であった。

その中から角右衛門の声が響いた。

「彼奴こそ、先夜、飯塚殿の屋敷で、我々の同僚二人を、いわれなく討ち果たしました悪侍でござる!」

つづいて、紋太郎の声が響いた。

「我々同僚の敵、お討ち取りくだされ!」

その人数の中へ、駈け込んで行く頼母の姿が見えた。

頼母の声が響いた。

「彼は五味左門と申し、拙者の実父忠右衛門を討ち取りましたる者、本日巡り逢いましたを幸い、復讐いたしたき所存……」

群の中には、松戸の五郎蔵もいた。寝巻姿ではあるが、長脇差しを引っ下げ、抜け上がっている額を月光に曝らし、左門の方を睨んでいた。

彼は、紋太郎によって呼び立てられ、眼覚めるや、乾児たちと一緒に、庭へ出て来たのであった。