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まちのたんてい

街の探偵

海野 十三

「シュピオ」1938(昭和13)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,275 字 · 9 页

青空文庫

キップの装置

『さっきから気をつけていると、コトンコトンと、微かなリズミカルな音がしているね』

と、彼は指を天井の方に立てて云うのであった。

『ああ、僕にも聞えるよ。鼠が居るのじゃないか』

と、僕はこたえた。

『ねずみ? 鼠が音楽家でもあればねえ』

と、彼はニヤリと笑って、

『――あれは天井裏に、瓦斯を発生する装置が置いてあるんだよ』

『え、瓦斯を発生するって、一体なんの瓦斯だい』

『多分キップの装置だろうね。亜鉛を硝子瓶に入れて置いて、その上に稀硫酸を入れるのさ。うまいこと水素瓦斯が出てきてはやみ、やんではまた出てくるんだよ』

『おい帆村。早く云ってくれ。なぜ水素瓦斯の発生装置が天井裏に置いてあるんだ』

と、僕は帆村探偵の腕をつかんでゆすぶった。

その途端に、電話のベルがけたたましく鳴りだした。

僕ははっとした。そして電話機のところへ駈けよろうとしたが、そのとき帆村が、

『おい待て、電話機に手をかけるな』

『ええっ、なぜ――』

『俺の後についてこい。説明はあとでするから――』

というなり帆村は、椅子から立ちあがった。彼の手はその椅子を頭より高く持ちあげた。