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まちのたんてい
街の探偵
海野 十三
「シュピオ」1938(昭和13)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,275 字 · 9 页
『さあ、現場へ行ってみようぜ』
初めて僕は、惨事のあった室に入った。
実験装置がやりかけたままになってそこに転がっているのも、まことに痛ましいことであった。
『ホスゲン瓦斯は、どこから入ってきたのかね』
『どこから入って来ようもないじゃないか。室内は密閉されてあるのも同然だ』
と帆村は舌うちをした。
『ストーブから不完全燃焼でもって一酸化炭素が出てきたのではないかね』
『ちがう。一酸化炭素なら、被害者の顔は赤くなっても決してこんな蒼い顔になりはしない。やはりホスゲンだ。ほら微かにのこっているだろう。林檎のくさったような匂いがするじゃないか』
なるほど、そういわれるとそんな匂いがしないでもない。
『相当の量が入ってきたんだろうね』
『そうだ、相当の量だ。相当濃いやつだね。しかも、短時間に、さっと入ってきたんだ』
『何処から?』
『それが分らない。さあこれからそれを探すんだ』
帆村は室内をのこのこ歩きだした。
『おい帆村君、こんなところに、空気抜けの穴が二つあるぜ。これは大丈夫かね』
『なんだ、空気抜けじゃないか。空気抜けは、室内の空気を上に吸い出すものだ。問題はない』