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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「手がかりになりそうなものがあったら、明日、会社へ持ってらしてね。記代子さんが見つかるまでは、会社の仕事はよろしいのです。穂積さんに言ってありますから。記代子さんを探すのが、あなたのお仕事よ」

放二はうなずいて去った。

二

放二は記代子の部屋をさがした。

室内を一目見たとき、記代子の覚悟のようなものが感じられでハッとした。部屋がキレイに整頓されていたからである。

「イエ、私がお掃除しましたの」

と、下宿の人は、事もなげに云った。

「おでかけのあとは、毎日々々、それは大変な散らかしようですよ。おフトンだけは自分で押入へ投げこんでいらッしゃいますけどね。ホラ」

押入をあけてみせた。くずれて下へ落ちそうだ。よくたたみもせずに投げこんである。放二は自分の万年床を思いだして、男女の差の尺度はこの程度かと、おかしくなった。

一目見たときは整頓されていたようでも、しらべていくと、乱雑そのものである。ヒキダシの中も本箱も。

日記帳を見出したとき、彼はいくらか安心した。覚悟の失踪なら、こういうものは焼きすてていくはずだ。たしかに今年の日記帳に相違ない。彼は中を見なかった。