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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「使わないマッチを、なぜ持って帰ったのでしょうね」

放二の思考はずッとマッチにこだわりすぎて、彼自身にもバカらしいと思われた。礼子は返事にこまって、

「いろんな場合がありうるわ。あの年配のお嬢さんには、どんな突飛なことも、御自分だけの歴とした理由がありうるわ。あのバーでも、あの年配のお嬢さん女給がまとめて三人ぐらい揃うときがあると、バーのシキタリが狂っちゃって、お店全体が狂うんです。それが理窟は合ってるんですよ」

「一回に二ツのマッチですと、一つも使わなかったものとして、十二三回、遊びに行かれたわけですね」

礼子はかるくうなずいただけで答えなかった。そして、考えこんでいたが、

「私、どちらかと云えば、青木に同情していたのです。ですが、失踪なさッたときいて、記代子さんがお気の毒ですわ」

「奥さんは、記代子さんの失踪を御存知のようでしたね」

「青木にきいたのです」

さッきから放二はそこにこだわっていたが、礼子の答えは簡潔だった。

「北川さんは、このこと、どう思いますか。記代子さんは、十日間ほど、毎日欠かさずウチのバーへいらしたことがあるんです。失踪は金曜日だそうですね。