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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「梶せつ子がドタ靴の元兇だってのは、どういうワケだい」

「お金つぎこんでるから」

「どうして?」

「十年前から兄さんが思いつめた人ですって」

「北川がそう言ったのかい」

「いいえ。兄さんのお友達の人。でも、公然たる事実よ。兄さんの顔に書いてあるわ」

「知らなかったな。そんなことが、あるのかなア」

「若い者ッて、年長の人に心の悩みを打ちあけないもんよ」

と、数え年十九の隠者は体験をヒレキして、夢見るような、あどけない目をした。

「アベコベねえ。リュウとした凄いようなミナリの女が、ドタ靴の男のなけなしの給料を貢がせるんだから」

そして、又、こうつけたした。

「そんなものだわ、人生は。妙なものなのね。私たちだって、男を喜ばすために稼ぐ気持になることもあるわ。好きになッちゃったら、ハタからはミジメなものね」

「君も経験があるのかい」

「私は、ないわ。でもね。男の人をダメにしたことがあったわ。私はね、なんでもないと思ってるうち、そんな風になったの」

この子のために三人の男が死んでるという、それを長平は思いだしたが、ルミ子の澄んだ目になんのカゲリも見えなかった。

長平は朝早く目をさました。