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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

それは記代子の値打に関することではなかった。人間が元々そういうものなのだ。しかし、同時に、万人がいたましくもあり、高くもあるのだ。

夕刊を読んでいると、映画欄の下段に、キッピイの店の広告がでていた。麗人を求む、とある。記代子が酒場で働く意志があるとすれば、あの店はよろこんで使うだろう。しかし、あの店にいないにしても、他の店にもいない理由にはならない。礼子の観察によれば、記代子は女給の生態が、つまらなくなかった、おもしろかった、というのである。

放二の部屋には、ルミ子や八重子や数人の女たちが、生菓子と果物をたべていた。ほかの女たちはシュミーズひとつであったが、ルミ子は服をつけていた。いつもルミ子はそうであった。

「記代子さんて方の屍体、まだ、あがらないんですか」

八重子が放二にきいた。

「え? 記代子さんが自殺したんですか」

放二はおどろいて訊きかえしたが、彼女らが記代子のことを知るわけがないことに気がついた。今よんできた新聞にも、そんな記事はでていなかったはずである。

「誰かそんなことを言った人があるんですか」

八重子は笑った。

「青木さんがルミちゃんちへ遊びにきて、今しがた帰ったばかしなんです。