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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

しかし、姿を現わしたのは、二人の子分であった。一人は彼女の前へお握りを入れた皿と一杯の水を置いて、

「バカ。ウチが割れるような大声をだしやがる。二度とあんな声をだしやがると、腰の抜けるほど、なぐりづけるから、そう思え」

一人は窓をしめて、

「まったく、頭の悪い女さ」

そうつぶやいて、又、心ばり棒をかけて立ち去った。

日がくれると、多くの跫音がドヤドヤと入りみだれて玄関へあつまるようである。

「兄貴、行ってらッしゃい。行ってらッしゃいまし」

と口々にのべる言葉がきこえるので、エンゼルのでかけるのが分った。

記代子は、すべてを諦めかけていたが、その気配をきくと、突然とび起きて、夢中で戸を叩いていた。

「エンジェル! エンジェル! 記代子は、ここよ! エンジェル!」

叩く手をとめて、耳をすましてみると、エンゼルはもう立ち去ったらしい。部屋へ戻るらしい子分の跫音が消えてしまうと、あとは物音がなくなってしまった。

疲れきってウトウトしかけると、数名の男たちがフトンをかかえて現れた。彼らがフトンをしき終ると、一人が記代子をだきすくめた。

「兄貴は一週間ほど御旅行だ。