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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
果して夕方にエンゼルの顔が見えた。彼はヒルネから目をさましたところらしく、いつも寝起きにそうであるように、はれぼッたい顔をしていた。坊やが目をさましたばかりのような、記代子には、忘れることのできないなつかしい顔であった。
記代子は思わず、とび起きて、格子にしがみついていた。
「エンジェル! 私よ。こんなところへ、なぜ入れるの! きこえないの! エンジェル! エンジェル!」
エンゼルは記代子の方を見向きもしなかった。
記代子には信じられないことであった。
「エンジェル! エンジェル!」
たった二、三間の距離である。たった一声で、ノドがつぶれてしまいそうな、この叫びがきこえない筈はない。しかしエンゼルはふりむいて、姿は見えなくなってしまった。
エンゼルは、わざと聞えないフリをしてみせたが、身仕度して、きっと迎えにきてくれると思った。十分間も窓からのぞいていたが、次に窓から見たのは子分の顔であった。彼は記代子を睨みつけた。
記代子は気を失ったように、ふらふらと崩れこんでしまった。
六
外から心ばり棒を外す音に、記代子はハッとして飛び起きた。やっぱりエンゼルが迎えにきたと思ったのである。