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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

夫婦喧嘩だけでは足らないのですか。ぼくはあなた方二人が誰よりも愛し合った夫婦だったことを知っています。一度そうであった者は、それ以上のものを探す必要はありません。どこにもそれ以上のものはないから。あなた方お二方の生活がつまらなければ、そのほかの誰の生活もつまらないのです。みんな諦めているだけです。元の枝へ急がれんことを。ザッとこんな手紙だったね。しかし、この手紙は出さなかったよ。なぜなら、まだ出さないうちに、君からの借金の手紙が来たからだ。ぼくはインネンをつけられているような気がした。そして君たちのことは二度と考えてみるのもイヤになったのさ」

ツツモタセのインネンを、と云わんばかりであったが、青木はそれが気にならないのか、まるで念頭にかからぬ様子で、

「あのときは取り乱して、失礼したね。金詰りで、四苦八苦の時だから。みすみすモウケが分っているのに、それが出来ないのさ。鉱石を駅まで十里の山径を運びださなきゃならないのさ。その運賃で赤字なのだ。鉱石をきりだしてるのは海岸なんだぜ。港をつくりゃ、もうかるのさ。大きな港じゃないんだ。百トン積みの小船を横づけにするだけでタクサンなんだからね。