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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
いっぺん洪水が起れば、すべては海へ流れて、河原は美しい自然の姿にかえってしまう。
この古都では、山と川が、昔のままだ。山の中には七八百年来の建物があるし、川をさかのぼれば、遠い王朝のころと同じ自然の中で同じような生活をいとなんでいる農民たちがいる。
古都の自然は美しいが、それが青木には暗く切なく見えるのである。千年来の古都の庶民の暗い生活が目にしみる。山々の緑の木々の一本ごとに千年来の人骨がぶらさがったり、からまったりしているような気がする。賀茂川が洪水ごとに山に向って逆流して、河原一面にすてられた屍体を山へ運んでまきちらし、山々だけがいつまでも変らぬ緑を悲しくとどめているような気がする。その骨の一本が自分だという気がした。
「京都の山の木の一本が、オレだったのさ。それを見てきたんだよ。なんのためにオレの心が京都へ行こう京都へ行こうと叫び立ったのかと思ったら、つまり、こんなことだったらしいや」
青木はこう長平に語って、カラカラ笑いだしたが、
「なア、長平さんや。あんたが、又、昔のように、オレとユックリ酒をのんでくれるところを見ると、オレの心が、いくらか落ちついてきたのかなア。