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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
彼は散歩というような気持にはなれなかった。街へでるときは、街の中へ、溶けこむ時である。街へ生死をなげうつ時だ。
なにも、このアパートにいたいわけではない。しかし、とにかく、この一室にいる時はこの一室に溶けこんでいる。そして、さらに街へ溶けこむことが、今は必要でもないし、オックウであった。
「今は、オックウです」
長平は気の毒そうに、つけたした。
「ぼくが上京していることを、見て見ぬフリをしてくれないかな。街へでる時には、京都から、街のために上京します」
デクの気持が分らぬではないが、バカバカしいことには変りがない。とにかく見切りをつけるのが利巧だから、せつ子はこだわらなかった。
九
放二はその二三日いくらか元気をとりもどしたように見えた。せつ子と穂積が訪ねた日は、夜になっても、人々が心配したほど疲れを見せなかった。
ルミ子が遊びに行くと、
「梶さんに会いましたか」
と、放二がきいた。
「ええ。私の部屋へいらしたわ。ハンドバッグいただいたの」
「話をした?」
「ええ」
「どんな話?」
「そうねえ。面白い話じゃないわ。お世辞の多い方ですもの」
「フフ」
放二は笑った。