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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「そうです。在京中は形影相伴う血族ですから、お心置きなく」

青木が放二のことを説明しておいたのだろうと思うから、長平は気にとめず、答えたが、実際は、意外千万な意味があった。しかし、そのときは、わからなかった。

営業前の薄暗い酒場というものは、坐り場所に窮するような落付かないものだが、礼子はむしろそうでもなく悠々と見まわして、

「ここ、カフェーというんでしょうか? バーですか。キャバレーですか」

「バーというんでしょうね。定義は知りませんが、洋酒を最も安直にのませるところです」

「女給さんは?」

「おります」

一方的に思いつめて、そのために離婚までして、手紙では事足らず、遠く京都まで三度もムダ足を運んでひるまない礼子。ひたむきに思いまどって何の余裕もないかと思えば、長平よりも落ちつきはらって、静かに四囲を見まわしている。そして、究理の学徒がするような冷静な態度でくだらぬ質問をしている。礼義とか外交手腕じゃないようだ。余裕がありすぎるから、余裕のない世界を弄び、たのしんでいるのじゃないか、と長平は疑りたくなるのであった。

礼子の知識慾はまだつゞいて、

「バーの繁昌はお酒の良し悪しですか、女給さんの良し悪しですか」