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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

屍体にだかれた遺書なんてのは、まったく下の下というもんだよ」

二

ルミ子の遺書は次のようであった。

ゴキゲンいかがですか。

先日お別れのとき、そのうちに一度だけお手紙しますとお約束しましたが、覚えていて下さいますでしょうか。これが約束のお手紙です。

昨日、梶さんのお宅で兄さんの告別式がありましたが、先生は上京なさらないそうですね。青木さんから、おききしました。私も告別式には行きませんでした。

野良猫のようにこの町にうろつくようになってからの短い月日は、私の一生にこの上もなく楽しい毎日でした。人のさげすむパンパンという境遇も、自分でみじめとも悲しいとも思いませんでした。むしろパンパンに安住していたのです。どこの奥さんがその家庭に安住するよりも、私はパンパンに安住していたと申せます。心にかかる小さな雲すらも、まずなかったと言いきれます。

子供の私は、不平家で、ねたみ強くて、いつも人にたてついていましたが、この町へ辿りついて野良猫生活をはじめてからは、人が変ったように素直でした。どんな小さな不平も、忘れてしまったのです。

先生はわかっていらッしゃると思います。