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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
なぜなら彼には答えずに、チラと目を光らせて、放二に向って話しかけたからである。
「北川さんとおッしゃいますわね」
「ええ」
「北川……放二さん?」
「そうです」
放二もいぶかしそうであったが次の問いは唐突だった。しかし礼子の声は静かで、
「梶せつ子さん。御遠縁とか、そうでしたわね」
「ええ。血のツナガリはありませんが、親同志が親しかったのです。同窓ですか」
「私の?」
「ええ」
「同級生?」
「え? 同窓ですか」
「フフ」
放二は他意なく応答しているが、見ている長平はイライラした。奥歯にもののはさまった、じらされる不快さだ。青木もそうだったがと考え、夫婦は悪い癖が似るものだ、別居なんて、たいがいに、止すがいゝや、と思うのだ。
「同じ学校の卒業生ですか」
長平がたまりかねて放二にかわって大声できくと、
「あら。大庭さんまで。同級ときいては下さらないわね。私、そんな婆さんかしら。あの方は、おいくつ?」
「満ですと、二十九です」
礼子は素直にうなずいて、
「女の五ツは男の十以上に当るらしいわ」
と、つぶやいたが、それにつけたして、事もなげに言った。
「梶せつ子さんは、青木の新しい恋人なんです」