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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
差向いで一方的な情熱を押しつけられては捌きに窮する。非礼も承知、身勝手も承知であるが、礼義にかなって、ぬきさしならぬハメになるには及ぶまい。
礼子に会うのは五年ぶりだが、童女のような面影が今も残って、三十四という年には見えない。美人というほどでもないが、清楚で、みずみずしい肉感もある。懐剣を胸にひめた古武士の娘の格と色気がしのばれる。
こうして警戒に警戒を重ねたアゲクの会見でも、会えば目を惹かれるものがあるのだ。してみると、そんな警戒もなく会っていたころは、見る目に礼賛の翳がかくれもなかったかも知れず、別して青木のもとで酔っ払ったりしたときには、目尻を下げて、礼子の気持に訴えるような卑しい色ごのみを露出したに相違ない。
痩せて小さなからだをキッと身がまえて、いつもリンリンと気魄をはりつめているようだが、どこかに、何かが抜けたような、けだるさがひそんでいる。それがないと、気位のバカ高い奥方の典型で、可愛げなどの感じられないリリしさだが、童女めく痴呆さが色気をつくっている。しかし総じて悪童には煙たいような奥方だ。
長平は自分の話し方が軽薄だったので、礼子が敵意を見せたのかと思った。