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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

な、そうだろう。ついでに、甘えさせてくれよ」

青木は泣きたいような気持だった。

「長平さんはオレに百万かさないかな。君、たのんでくれよ。二百万でも、三百万でも、五百万でも、多いほど。なア、君。ぼくのノドからは手がでているんだよ」

冗談めかしても、気持は必死になる。それが顔をゆがめた。

「君がもうけさせてくれゝば割り前をだす。もうけの半分君にやる。百万なら五十万。二百万なら百万。なア、君。半分だぜ。こんな割前をだしてもとは、金欲しやの一念きわまれり。鬼の心境さ」

襖が静かに開いた。姿を現したのは礼子であった。

顔の冷めたさは、すべてをきいたと語っていた。

二

青木は礼子のひややかな顔にもおじけなかった。

「ま、お坐りなさい。ぼくの昔の奥さん」

彼はかえってふてぶてしく笑って、

「あんたも、ぼくも、見事にふられたよ。長平さんに。彼氏は来てくれないッてさ」

悪党じみて見せるほかに手がなかった。

「ま、一献いきましょう。なに、お会計は心配しなさんな。北川さんが、ひきうけてくれるとさ。こちらの奥さん、ぼくのフトコロにコーヒーをのむ金もないの御存知なのさ。