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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

それでいて兄さんの乏しいサラリーからお小遣いたかるのよ。兄さんのドタ靴とボロボロの靴下見たでしょう。姐御にたかられてしまうから、靴下一足買うことができないのよ。あんたも、似てるわよ。どうも、ミナリのパリッとしたのは、変な世渡りしてるらしいわね」

こう言ったが、咎める表情が浮かんだ様子も見えない。のんびり、チビチビとタバコをふかしている。

「君たちにとって、兄さんはなんに当る人なんだい」

「私たちは人間の屑というのかも知れないな。でも、あんたたちほど変な世渡りしていないよ。兄さんにタカルような根性だけはないわね。すがっているのよ。屑だもの。すがらずに生きられないわ。兄さんは私たちの大きな大きなママ。心のふるさとよ」

なんの変った様子もなく、静かに立ち上って、二千円をぶら下げて、

「ひとりで、おやすみ。泊めてあげるから。兄さんのお金じゃ、私たちのからだは買えなくッてよ」

立ち去ろうとするのを、青木はよびかけて、

「許してくれ。兄さんにも、あやまってくれよ。一晩ほッといてもらうと、ぼくも助かるよ。泣いて、泣きあかしたいのだ」

「例外中の例外」

ルミ子は軽くギョという顔をして、扉の外へ消えた。