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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

セラダは自分の車の中で法本とも一人の人物にピストルで脅迫されて渋々云うままに運転せざるを得なかったのです。

セラダはそのポケットのピストルとアパートのカギをとられました。次にちょうどよろしいあたりで頭をうたれて死に、法本は自分のピストルにセラダの指紋をつけて車中に投げすて、ハンドルをきって車は屍体をのせたまゝ谷底へすべり落ちてしまったのです。

そして彼らは自分の車にのりこんで、いったん熱海へ戻ってから東京へ戻りました。その夜のうちに、セラダのアパートの現金はどこかへ運び去られてしまったのでした。セラダの車は翌日発見されて、セラダの経歴が分ってのちに一応自殺として事件は打ち切りとなったのです。

セラダの死後、小夜子サンは出頭を命ぜられてMPの取調べをうけました。

それはセラダの自殺についてではなく、セラダの過去のある重大らしき犯罪についてでした。その犯罪についてセラダが何か彼女にもらしたことがないかと取調べをうけたわけです。彼女は明瞭にナイと答えました。すると取調べは簡単で、すぐカンベンしてくれたのです。彼女はさきに熱海署でセラダの車中にころがっていたピストルが彼のものかという質問をうけたことがありました。