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はだかぎ

裸木

豊島 与志雄

「新潮」1926(大正15)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,049 字 · 33 页

青空文庫

勿論、死なれるのは困るが、そっと消えて無くなったらと、まあそれくらいのところだね。それだって、男性通有のことだとすれば、そう軽蔑も出来ないよ。」

「そりゃあ、細君を持ってる男ばかりが考えることだ。」

「そうかも知れないが……然し、物事は考えようだからね。夫婦生活なんて、二三年で沢山なものかも知れないよ。」

「君もそうなのか。」

「僕……。いや、僕は、妻を愛してるし、妻に消えて無くなって貰いたいとも思ってやしないが……それでも、何と云ったらいいかなあ……籠から脱け出したくなることもあるよ。」

「籠から脱け出すって……。」

「まあ何だね、凡てを忘れて、自由に飛び廻る……とでも云うのかしら。」

「いつでも君は自由に飛び廻ってるじゃないか。」

「それがね……少し。」

佐野はうそうそと微笑んだ。昼間からのことが、いろんなことが、頭に浮んでいた。

「どうなんだい。」

「まあいいや。……そんなことよりか、今晩、これから改めて飲みに行こうか。たまには気晴しもいいよ。」

「飲むのはいいが……。」

武田は立止って、佐野の顔をじっと覗き込んできた。

「君はこの頃、遊び初めたんだね。」

「いや、遊ぶというほどじゃないよ。