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はだかぎ
裸木
豊島 与志雄
「新潮」1926(大正15)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,049 字 · 33 页
」
「…………」
佐野は苦笑した。
「愉快なもんだね。」
「ほう、そんなに気に入ったのかい。」
「ああ、すっかり気に入っちゃった。」
「まあー、何を云っていらっしゃるの。」
「いや本当ですよ。佐野君なんか、家に子供がいるんだから、ふらふら出歩かなくったって、子供の寝顔でも見てる方が、よっぽどいいんだがな。」
「そんなら賛成よ、わたしも。あなた、どう……。」
「つまらないことを……。いやでも毎日見なくちゃならないじゃないか。」
「そう……義務となっちゃあ……駄目かな。」
「あら、義務じゃありませんよ。自然の情愛なんですもの。」
「そうです。義務は悪かった。」
「そんなこと、どうだっていいじゃないか。つまらない……。」
「うん、どうだっていい。」
冗談のような真剣のような、一寸掴みどころのないものが、武田の調子に現われていた。佐野と敏子とは、何となく武田の顔を見守った。
敏子が席を外すと、佐野は武田の方へ近々と視線を寄せた。
「あれから……こないだと、気持が変ったようだね。」
「僕が……変りゃしないよ。」
武田は口を尖らせて見返してきた。
「然し、あの時はひどく君は陰気だったが……。