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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
「朝日」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页
祖先の血が通うムリロの名画
開きました。
続いて、幾十、幾百の悪獣は、圧迫的な、いやらしい唸の合唱を挙げて、四方から、恐ろしい力で圧倒します。
「た、助けて――」
お鳥は、初めて悲鳴をあげました。
「萩江様――、鞍、鞍馬様――」
素より萩江鞍馬が、其辺に居ると思ったわけではありませんが、五年間自分を尋ねてくれたと言う純情的な武士の名が絶望的なお鳥の唇へ、フッと蘇返ったのです。
それと同時でした。
真っ先の狼がサッと跳んでお鳥の肩へ、
「あッ」
その時遅く、礫のように飛んで来た一人の武士、狼の首筋をサッと斬り払うと、お鳥を後ろに庇って身構えました。
「お鳥殿、もう大丈夫」
「アッ、萩江様」
お鳥は夢のような心持で、救いの神の若い武士を見上げました。
「お鳥殿、危いことであった」
そう言い乍ら萩江鞍馬は、狼の大群の中へ、刀を舞わしてサッと飛込みました。又二三疋は斬られた様子、悪獣のたじろぐ隙に、お鳥の縄を切り解いた鞍馬は手を取って側の大木へ――。
祖先の血が通うムリロの名画
木の上へ、お互の身体を梯子にして登ろうとした千匹狼は、鞍馬の為に、何十匹斬られたかわかりません。
悪闘の一刻悪獣の群もさすがに少し身を引いて、遠巻きに樹上の二人を見上げました。