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らしんのにょせん

裸身の女仙

野村 胡堂

「朝日」1932(昭和7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页

青空文庫

年頃まで裸で育った山の娘

「あれッ、殿様」

「えッ、離せッ」

縋り付くお鳥を蹴飛ばして、源吉を追って、庭木戸の外へ。

相憎の月夜、五六間先へ、一散に逃げて行く源吉の後姿を隠す物の隈もありません。

年頃まで裸で育った山の娘

お鳥は、その赤い毛と碧い眼が変って居るように、世にも数奇な運命に弄ばれた女だったのです。

物心付いたのは、碓氷峠の奥、めったに人も通わぬ炭焼小屋で、岩吉という、山猿のような男の世話になっている時でした。

世話になって居る――というのは本当で、お鳥自身は何処で生れたか知りませんが、兎に角岩吉の子で無かったことは事実で、二人は、全く顔形ちが似ないばかりでなく、岩吉は、山人の仲間でも評判の醜い独り者で、女房というものを持ったことの無い男だったのです。

お鳥は、猿の子のように、一年の半分は裸体で育ちました。岩から岩へ、木から木へ、山の餌を猟って、山の獣達と一緒に何んの苦労もなく生い立ったのですが、髪の毛が房々と延び、双つの乳房が、こんもり盛上って、四肢に美しい皮下脂肪が乗り始める頃から、身を切られるような、恐ろしい羞恥に悩まされ始めたのでした。

岩吉は、ろくに着物を着せてはくれませんでした。