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らしんのにょせん

裸身の女仙

野村 胡堂

「朝日」1932(昭和7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页

青空文庫

「ね、源吉、そんな浪人の話より、私は皆んなと一と眼逢い度いんだが、何んとかならないものかねえ」

「おっと、そんな贅沢を言っちゃいけねえ。一座とはすっかり手を切った筈の姐御だ。よしんば今日の物に困るたって、のめのめ顔を持って来る親方じゃねえ、――それよりは今の浪人者だ、何うしても姐御に逢わずに居られないから、ここ十日の間に、折を見て、雑司ヶ谷の鬼子母神様へお詣りをして貰い度い。小日向と雑司ヶ谷なら、遠いところでは無いし、御寵愛の籠の鳥でも、子宝を授けて貰い度さのお詣りとか何んとか、口実はどうでも出来るだろう、と斯う言うのさ」

「――――」

「――それでも疑念があるなら、斯う言って貰い度い、そのお鳥殿とやらの、世にも不思議な素性が解った――と、斯う言うんだ、大分変ってるじゃ無いか」

「それは、何んとかして出られない事はないが、何んな武家なんだい」

「嘘も偽も、悪巧みもあるような人柄じゃねえ、名前は萩江鞍馬、絵に描いたような好い男だよ」

「萩江――鞍馬――知らないねえ」

二人は近々と、何時の間にやら囁やき合う姿勢になります。

「不義者ッ」

不意に、恐ろしい一喝、縁側から怪鳥のように跳び降りたものがあります。