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ふくめんのぶとうしゃ
覆面の舞踏者
江戸川 乱歩
「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页
一体まあ、これは何という気違い沙汰でありましょう。そうしたことに慣れぬ私は身も知らぬ相手と、暗闇の中で踊り狂っている自分が、ふと空恐しくなるのでした。
やがて、丁度皆が踊り疲れた頃に、蓄音器の奏楽がハタと止って、先程のボーイの声が聞えました。
「皆様、次の部屋に、飲み物の用意が出来ましてございます。暫くあちらで御休息くださいますようお願い致します」
声につれて境のドアが左右に開かれ、まぶしい光線がパッと私達の目をうちました。
踊手達は、司会者の万遺漏なき心くばりを感じながら、しかし無言のまま、一対ずつ手をとり合って、その部屋へ入るのでした。広間には比ぶべくもありませんが、でも相当広い部屋に、十七箇の小食卓が、純白のクロースに覆われて、配置よく並んでいました。ボーイの案内につれて、私と私の婦人とは、隅の方のテーブルにつきました。見ると、給仕人はなくて、各々のテーブルの上に、二つのグラスと二本の洋酒の瓶が置かれてあります。一本はボルドウの白葡萄酒、他の一本は無論男のために用意せられたものですが、三鞭酒などではなく、何とも知れぬ不思議な味の酒でした。
やがて奇怪な酒宴が開かれました。