轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふくめんのぶとうしゃ

覆面の舞踏者

江戸川 乱歩

「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页

青空文庫

それは兎も角、無言の酒宴は、今や酣と見えました。言葉を発するものこそありませんけれど、室内はグラスの触れ合う響、衣ずれの音、言葉を為さぬ人声などで、異様にどよめいて来ました。誰も彼も、非常に酔っているように見えました。若しあの時、ボーイの口上が少しでもおくれたなら、誰かが叫び出したかも知れません。或は誰かが立上って踊り出したかも知れません。が、流石は井関さんの指図です。最も適当な時機にボーイが現れました。

「皆様、お酒が済みましたら、どうか踊り場の方へお引上げを願います。あちらではもう、音楽が始っております」

耳をすますと、隣の玄関からは、酔客達の心をそそるように、前とはガラリと変った快活な、寧ろ騒々しい管絃楽が響いて来ました。人々は、その音楽に誘われるようにゾロゾロと広間に帰りました。そして、以前に数倍した物狂わしき舞踏が始まるのでした。

あの夜の光景を、何と形容したらいいでしょう。耳も聾せんばかりの騒音、闇の中に火花が散るかと見える無数の乱舞、そして意味のない怒号、私の筆では到底、ここにその光景を描き出すことはできません。のみならず、私自身も、四肢の運動につれて発した、極度の酔に正気を失って、人々が、また私自身が、どのような狂態を演じたかを、殆ど記憶しないのであります。