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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

「倹約して吸うんだぞ、ええか、船が永いんだからね」みんなに一つずつ分けてやりながらそう云い含めていたが、急にやって来たところを振り返るなりさも無念そうな顔をした。「……しまったな。あの課長とやら班長とやらの煙草屋でも亦みんなして買えばよかった。お前達ももうこれでこことはおさらばだから、最後の胸糞おさめに、丁寧な釣銭を貰ってよ。それ、みんなちょっくら行って来ようか……」

「ええんだよ、親方、もう時間がねえから」

「ふふふ、ふふふ、じゃ、よすとしよう。それ又急ごうぜ」今度は彼が先頭に立ってびっこしゃんびっこしゃんと足を曳きずりはじめた。「……それからな、もう一つ、あの南方ちゅうとこにはマラリヤってひでえ病気があった筈だ。なあ、おい、O、そうだろ?」と、振り返って同意を求めるなり、「お前達、マラリヤって知ってるかえ? あのキニネをのめば治る奴だ。そうそう、マラリヤちゅうんだ。こいつがこっちのよりは全く性悪だそうだからね、注意するこったぞ。それ、あすこに又煙草屋があらあ。……おい、韓原、どこへ行くんだね? 何、靴下を買う? お前、南じゃ靴下いらねえだぞ。みんな裸足で、着物も要らねえ位のとこなんだよ。