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しんらんしょうにんについて

親鸞聖人について

吉川 英治

「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页

青空文庫

といってやりたくなるほど、私はその二人の敬けんな姿が、なんともいえず、私のひとみの中にしみました。

私の書きましたつたない「新・平家物語」のなかに、阿部の麻鳥という人と、妻の蓬という人を晩年まで書いておりますが、「新・平家物語」の一番のラスト・シーンに、吉野雛として書きました一章は、実はその老夫婦がモデルなんです。モデルにしておきながら、以後はめぐりあえないで、お礼も原稿料のおすそ分けもしないんですが……。

なんだの、かんだのといってますが、人生それですよ。だのに、このごろは違いますなあ。家庭裁判所へ聞くと、事件のなかで一番多いのが夫妻別れの問題。それから新聞なんかの人事相談といいますか、あれにもよくどうのこうのと訴えていますが、また回答者も回答者でそんなにいやならおよしなさいと書いとるですね。

きょうこのごろのように「性」を粗末に扱う風潮については、これはわれわれ文壇人も大いに責任があります。自由だといって書きまくっていますが、お恥ずかしい限りです。これはちょうど科学者がですね、原子や電子に向かって核分裂をはかろうと企てるような熱情で、人生を、人間の深いところをほんとうに書き、さぐるには、この性愛から、性愛の姿から書かなければだめだという理屈らしいんですが、なにをプラスしているでしょうか。