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しんらんしょうにんについて

親鸞聖人について

吉川 英治

「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页

青空文庫

先ごろは、親鸞聖人の大遠忌があり、今夜も親鸞聖人についてご関心の深い、またご信仰の深い皆さまのお集まりと思うのでありますが、私はそうした皆さまにお話し申し上げるほどの何も持っていないんです。だのに、かつて小説の上で親鸞を書き、その映画で錦之助君が親鸞をやったりした。あのような小説を物知り顔に書きましたのも、いまにして思えば、若気のあやまちであります……。

小説親鸞や錦之助君の親鸞を見ると、端麗、いかなる九条兼実とその姫君、玉姫の前でも恋しそうな青年に思われますが、まったくはそうではありません。

どんな風ぼうの人かというと、本願寺に、そしてめったに公開されないそうですが、田中一松さんからこの前、大きく拡大した画像を一ついただきましたが、これは「鏡の御影」というものだそうです。聖人がまだ在世七十歳のころ藤原信実の子息の、俗称袴殿といわれる人が、専阿弥陀仏ともいわれた人ですが、この人が七十歳の聖人の前でおうつししているうちに、何かただならぬ異なるものを感じて、絵筆を持ちながら、涙がこぼれて仕方がなかったといい伝えのある画像があります。

これを見ますと、決して端麗柔軟なお方じゃなくて、むしろ筋骨荒く、骨ぶとな、背はさまで高くなかったようですが、その専阿弥陀仏が書きました像などを見ますと、この眉毛の一筋一筋を鮮明