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しんらんしょうにんについて

親鸞聖人について

吉川 英治

「毎日新聞」1962(昭和37)年10月1日号から9回に分けて連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,038 字 · 29 页

青空文庫

ようなもんです――と思います。

とめどのなく危険なものであり、そして持ちようによっては、生涯かけてさまざまな憂い時には憂い曲、喜びの時には喜びの曲をと、長い人生を通してかなでてゆくもの――そしてこそ、ほんとうの性だと思うんです。

親鸞聖人がこの問題を心におかれた時にはですね、私どものこんなつまらん話どころでなく、あらゆる微細にわたって、ずいぶん深く考えられたに違いありません。ですから聖徳太子の夢告の偈によって、仏者も妻をもつことは、なんらのハバカリでない、不自然でない、釈尊の意にそむくもんじゃないということを信じられるに至っても、なおその間、数年間、妻をお持ちにならなかったんじゃなかろうかと思います。そしてやっとさきほど申しました恵信尼というような方とご一緒になったんです。

まもなく、こんどは法然上人、その人の上に、念仏停止というようなあの大弾圧が下りました。法然も流され、親鸞も流されたわけです。この動機も男女の問題であります。以後、ずっと越後から東国、常陸あたりに晩年まで送られまして、なかなか都へは帰ってこられなかったらしいですね。

これには聖人の心境にも、いろんなことがあったんでしょうけれども、京都の方の事態にも、承久の兵乱というものが起こりまして、北条義時が時の後鳥羽上皇を隠岐、土御門上皇は土佐、