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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

それはさておき、一切の認識が科学的であるべきだとすれば、一切の認識は理論と無関係ではあり得ない。ただ認識は理論という形を取ることもあれば、エッセイの形を取ることもある。ばかりではない、道徳的判断や行為という形を取っても現われるし、文芸作品の各様式となっても現われる。文芸が思想の表現と見られる以上、文芸の夫々のジャンルは又、云わば認識の夫々のジャンルでもあるわけだ。だがこういう様々の形態やジャンルに於ける認識も、理論という形の下に於ける認識と決して無関係ではない筈だ。もし本当に之が無関係ならば、小説や詩について批評家はなぜ評論の筆を起こすことが出来るのだろう。評論は文芸についての理論形態を持った認識表現だが、理論と元来無関係な、いや元来原則的に理論との間に潜在関係を有っていないような文芸作品が、間違っても評論の対象になり得る筈はない。この点は充分注目しなければなるまい。

認識が科学的でなければならぬと云って、夫が必ずしも理論的形態を取らねばならぬということにはならぬ。と共に、だからと云って理論的な認識と無縁なものであっていい、ということには決してならない。