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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

真理と虚偽(乃至誤謬)との例の弁証法的な連関は、之を不用意に見ると、真理に関する相対主義を結果する。所謂懐疑説と呼ばれるものが夫だ。尤も懐疑説にも色々の動機と又色々の段階とが存する。プロタゴラスは云わば消極的な懐疑論者であったと云っていいかも知れない。人は万物の尺度だという主張は、そのままではまだ必ずしも、懐疑主義ではなくて、単に真理のもつ人間的弱点かそれとも又人間的な長所を指摘するに止まるかも知れない。だが彼はプラトンなどが紹介する処によると、何と云っても相対主義者であったらしい。何等かの客観的真理というものを可能だと信じていたとは考えられない。併しそれにも拘らず、彼はなおソクラテスを説得しようと企てる。同じソフィストのソクラテスの尺度よりも自分の尺度の方が優っていることを主張しようとする(対話篇『プロタゴラス』)。だから、彼は相対主義者である限り懐疑論者であったが、併し人と議論をする興味を失い得なかった限り、懐疑論者としては消極的であったわけだ。多くの懐疑論者はこのタイプにぞくする。

積極的な懐疑主義はピュロンの夫である。彼によると、知覚や思惟は全く相対的なものなので、それは人間を不安にする以外のことは出来ない。