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だれ
誰
「知性」1941(昭和16)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,545 字 · 17 页
しんから悪い人なんて見た事が無いと君は言うけれども、僕は見た事がある。二、三年前に新聞で読んだ事がある。ポストにマッチの火を投げ入れて、ポストの中の郵便物を燃やして喜んでいた男があった。狂人ではない。目的の無い遊戯なんだ。毎日、毎日、あちこちのポストの中の郵便物を焼いて歩いた。」
「それあ、ひどい。」そいつは、悪魔だ。みじんも同情の余地が無い。しんから悪いやつだ。そんな奴を見つけたら、私だって滅茶滅茶にぶん殴ってやる事が出来る。死刑以上の刑罰を与えよ。そいつは、悪魔だ。それに較べたら、私はやっぱり、ただの「馬鹿」であった。もう之で、解決がついた。私は此の世の悪魔を見た。そいつは、私と全然ちがうものであった。私は悪魔でも悪鬼でもない。ああ、先輩はいい事を知らせてくれた。感謝である、とその日から四、五日間は、胸の内もからりとしていたのであるが、また、いけなかった。つい先日、私は、またもや、悪魔! と呼ばれた。一生、私につきまとう思想であろうか。
私の小説には、女の読者が絶無であったのだが、ことしの九月以来、或るひとりの女のひとから、毎日のように手紙をもらうようになった。